ポスティングシステムがあるといっても、選手は、保留制度により、選手が、メジャーリーグの球団に移籍するために契約交渉、練習参加等を行うことは禁止されているのが大原則です。
その中で、メジャーリーグを希望する選手は、球団からポスティングシステムの利用することの承諾を得るために交渉を行いますが、現状、球団にとってはポスティングシステムの入札金額以外にメリットがないため、その承諾を得られることはほとんどありません。これまで球団が承諾したポスティングシステム利用のケースも、その翌シーズンには、メジャーリーグに移籍できるFA権を取得する選手について、FA権を行使されて移籍されてしまった場合、海外移籍であるため何の補償も得られないため、その年にポスティングシステムで入札金額を得た方が球団経営上得である、といった理由に基づくものばかりです。その意味では、ポスティングシステムがあるといっても、海外FA権を取得する前シーズンまでは、選手は、ほぼ利用することができない制度であるといえるでしょう。
選手は、まるで競走馬がセリにかけられるのと同じようにポスティングにかけられており、自分が所属する球団を選ぶことは認められません。選手は、球団の“所有物”ではないのですから、競走馬が売買されるように扱われるのであれば、それはまさに人身売買そのものです。
松坂選手の例では、ボストン・レッドソックスのみが選手と交渉できることになりますので、松坂選手は、他球団が提示する年俸と比較しながら交渉することはできないことになります。
したがって、選手の年俸が公平な競争の原理に基づいて決定できず、適正なレベルとならない可能性があります。いうならば、メジャーリーグ球団にとっては選手の年俸を抑えることができる非常に都合の良い制度となっています。
手続的にみても、選手の海外移籍に関する規定は、「選手契約に関係ある事項」であり、野球協約上選手側の賛成が必要とされている特別委員会決議事項と決められていますが、ポスティングシステムは選手側の承諾を経ずに制定され、手続上も問題がある制度です。
現在、選手会は、日米選手協定の見直しを要求しています。
選手会は、多くの選手のメジャーリーグ移籍に対する強い希望がかなえられたことについて、心から祝福しておりますが、一方で、入札なしという弊害も生じています。選手会は、この制度をより選手の意思を反映した、そしてより現実の状況に即したものに変更するため日米選手協定の見直しの要求を行っています。