代理人交渉を巡る問題の現状についてご紹介します。
選手会から、選手と球団の間のフェアな交渉を手助けする必要性を訴え、2000年オフに日本人選手に関する代理人制度が導入されてから、10年が経ちました。ここでは、日本人選手の代理人交渉を行っていただく上で前提となる、代理人交渉を巡る問題の現状について、ご説明いたします。
球団側は、日本人選手の代理人制度の導入にあたり、以下の条件付けを行っています。
①代理人は日本弁護士連合会所属の日本人弁護士に限る。
②一人の代理人が複数の選手と契約することは認められない。
③選手契約交渉における選手の同席に関して、初回の交渉には選手が同席する。二回目以降の交渉について、球団と選手が双方合意すれば、代理人だけとの交渉も認める。二回目以降は、選手が同席していた場合でも、双方合意すれば、選手が一時的に席を外し、代理人だけとの交渉となることも認める。
これらの球団側の条件に対する現状、選手会の意見は次のとおりです。
①について
代理人制度の導入当初は、代理人の資格者に関する試験的運用状況から、日本プロ野球選手会選手代理人規約においても、弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)の規定による弁護士に限っておりましたが、選手会は、2003年オフから、メジャーリーグ選手会公認代理人にも、代理人資格を拡大しました。2010年1月時点で、選手会登録代理人数は236名(内訳は、弁護士233名、メジャーリーグ選手会公認代理人3名)、弁護士代理人経験者は61名となっています。
しかしながら、球団側は、現在も、代理人の資格を、日本弁護士連合会所属の日本人弁護士に限るという条件を緩和しておらず、メジャーリーグ選手会公認代理人による代理人交渉を否定しています。
選手会としては、外国人選手に関しては弁護士でなくても代理人交渉ができている実態や、メジャーリーグなどから復帰する日本人選手については、メジャーリーグ選手会公認代理人による代理人交渉ができている実態に鑑み、球団側に対して、選手会が認めるメジャーリーグ選手会公認代理人による代理人交渉を要望しています。
②について
球団側は、一人の代理人が複数の選手を代理することで生じる問題点、弊害として、選手間の利益相反の問題や、いわゆるスーパーエージェントの問題などを上げています。
しかしながら、日本において、まだまだ代理人交渉のノウハウを十分に蓄積した弁護士代理人が少ないことを考えると、有能な一人の代理人が一人の選手しか担当できないとすれば、実質的に多くの選手の代理人選択の自由は著しく害されてしまうことになり、代理人交渉を導入した意義が失われる結果にもなりかねません。
まだ一人の代理人が複数の日本人選手を代理したことはありませんが、一人の代理人が外国人選手とメジャーリーグから復帰した日本人選手併せて2人の代理を行った事実はあり、選手会は、一人の代理人が複数の日本人選手を代理することを解禁することも十分に検討してもよい段階にあると考えています。
③について
当初、条件とされた選手の同席についても、現在は、初回の選手の同席を含め、球団によっては、柔軟な運用がなされるようになりました。
例えば、毎年、同じ選手を担当している代理人の場合、球団と代理人との交渉において、初回の同席も必要とされないケースが出てきています。また、初めて選手の代理人交渉を行う場合であっても、初回は選手が同席し、代理人を含めた挨拶だけが行われ、実質的な交渉については、次回以降、球団と代理人の間で行われることもあります。
こちらの対応については、球団によって対応が異なりますので、何かご不明な点があれば、選手会事務局までお問い合わせいただければと思います。